大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

新潟地方裁判所 昭和58年(わ)44号 判決

裁判所書記官

廣瀬一秀

本籍並びに住居

新潟県西蒲原郡巻町大字角田浜一一七四番地

会社役員

小川忠右

昭和一二年八月七日生

本店の所在地

新潟県西蒲原郡巻町大字角田浜一一一四番地

有限会社角田産業

代表者代表取締役

小川忠右

右小川忠右に対する所得税法違反、法人税法違反、有限会社角田産業に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官渡邊公進出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人小川忠右を懲役二年及び罰金二五〇〇万円に、被告有限会社角田産業を罰金五〇〇万円に各処する。

被告人小川忠右においてその罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人小川忠右に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人小川忠右は、新潟県西蒲原郡巻町大字角田浜一一一四番地において、「角田産業」の名称で建設資材販売及び土木工事業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

一、昭和五四年分の実際総所得金額が一億四三六二万九九四二円あったにもかかわらず、昭和五五年三月一五日、同町大字巻字蓮田甲四二六五番地所在の所轄巻税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一七三七万六三三〇円でこれに対する所得税額が五三〇万二〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額九一八八万二七〇〇円と右申告税額との差額八六五八万七〇〇円を免れ、

二、昭和五五年分の実際総所得金額が九三〇三万一四八八円あったにもかかわらず、昭和五六年三年六日、前記巻税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一三三八万一二二〇円でこれに対する所得税額が二八四万六二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五三四〇万二九〇〇円と右申告税額との差額五〇五五万六七〇〇円を免れ、

第二  被告有限会社角田産業は、新潟県西蒲原郡巻町大字角田浜一一一四番地に本店を置き、建設資材販売及び土木工事業を営むもの、被告人小川忠右は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人小川は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空の仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

一、昭和五五年五月一日から同年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一一九四万一五五五円あったにもかかわらず、昭和五六年一月五日、前記巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五六一万三一五円でこれに対する法人税額が一七九万三三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額四三二万五七〇〇円と右申告税額との差額二五三万二四〇〇円を免れ、

二、昭和五五年一一月一日から昭和五六年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九五三二万六〇一四円あったにもかかわらず、昭和五七年一月四日、前記巻税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三四五七万六五一六円でこれに対する法人税額が一三一三万六二〇〇円である旨の虚偽の法人確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三八六二万七六〇〇円と右申告税額との差額二五四九万一四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人小川忠右の当公判廷における供述

一  被告人小川忠右の検察官(四通)及び大蔵事務官(一七通)に対する各供述調書

一  被告人小川忠右作成の答申書一五通

一  検察官作成の捜査報告書二通

一  検察事務官作成の電話聴取書

判示第一の一及び二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の調査書三四通(「売上」、「雑収入」、「期首たな卸高」、「仕入」、「期末たな卸高」、「諸税公課」、「未払事業税」、「水道光熱費」、「旅費交通費」、「通信費」、「接待交際費」、「消耗品費(昭和五七年一一月二九日付のもの)」、「燃料費」、「修繕費」、「損害保険料」、「減価償却費」、「福利厚生費(同日付のもの)」、「給料賃金」、「支払割引料」、「支払利息」、「地代家賃」、「事後費用」、「支払手数料(同年一二月二七日付のもの)」、「雑費(同日付のもの)」、「事業専従者控除」、「申告事業所得」、「農業所得」、「利子所得」、「配当所得」、「給与所得」、「総合課税の譲渡所得」、「雑所得」、「砂金勘定」及び「事業主勘定」についてそれぞれ調査したもの)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び修正損益計算書各二通(昭和五四年一月一日から同年一二月三一日及び昭和五五年一月一日から同年一二月三一日の各期間についてそれぞれ計算したもの)

判示第二の一及び二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の調査書一三通(「簿外売上」、「架空仕入」、「減価償却費(特別償却)」、「福利厚生費(昭和五七年一二月四日付のもの)」、「交際費」、「消耗品費(同日付のもの)」、「賃借料」、「支払手数料(同日付のもの)」、「雑費(同日付のもの)」、「価格変動準備金繰入額及び戻入額」、「交際費損金不算入額」、「未納事業税認定損」及び「事後費用」についてそれぞれ調査したもの)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び修正損益計算書各二通(昭和五五年五月一日から同年一〇月三一日及び同年一一月一日から昭和五六年一〇月三一日の各期間についてそれぞれ計算したもの)

(法令の適用)

一  被告人小川忠右

判示第一の各事実につき昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項、二項(懲役と罰金を併科)

判示第二の一の事実につき右法律による改正前の法人税法一五九条(懲役刑選択)

判示第二の二の事実につき改正法人税法一五九条(懲役刑選択)

併合罪加重につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項

換刑処分につき刑法一八条

懲役刑の執行猶予につき刑法二五条一項

二  被告有限会社角田産業

判示第二の一の事実につき昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項

判示第二の二の事実につき改正法人税法一五九条、一六四条一項

併合罪加重につき刑法四五条前段、四八条二項

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 若原正樹)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例